#止まることのない少子化 (その41)

「大学生少子化シンポジウム」への誘い https://sites.google.com/view/shoushikaforum202412

2024年12月14日(土) 友達誘って来てね~

バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代にかけて就職難で苦しんだ氷河期世代の不遇が続いていることは実感しなければならない。現在40~50代前半にあたり、他の世代に比べると同じ正社員でも賃金の伸びが鈍いことが明らか。まったくもって理不尽だし気の毒な世代だと思うし、政界もこういう件に関してはあまり関心を持っていない。勿論、管理職の割合も下がっている。このままだと将来、経済力の乏しい高齢層が膨らみ、社会保障の負担が想定以上に重くなりかねない。

世界的なインフレが波及し、日本の物価上昇率はこの2年あまり2%を上回って推移している。物価高が促すかたちで賃金も上がり始めた。厚生労働省の毎月勤労統計で、手当てなどを含む現金給与総額(名目賃金)は2022年1月以降、前年同月比でプラスが続く。

でも皆が賃上げの恩恵を受けているわけではない。本当なんですよ。偏りは世代間で目につく。厚労省の賃金構造基本統計調査によると、23年の20~30代の正社員の給与は10年前の同世代より1万円あまり高い。40代後半は1千円強しか増えていない。50代前半はむしろ減った。

出版社で働く東京都内の40代の男性は「非正規社員だった30代のころは生活費の工面で手一杯だった」と振り返る。同年代の別の男性は「就職当時、ボーナスは少なく、賃上げ率も低かった。20代半ばの頃の年収は今の世代に100万円くらい劣っていた感覚」と話す。

仕事を見つけるのに苦労した氷河期世代。正社員になった人もその後のキャリア形成で不利な立場に置かれ続けている。より年長のバブル世代の層の厚さや近年の定年延長などの流れが影響し、昇進も遅れがちな傾向が浮かぶ。

50代前半で部長級に就いている割合は10年前から1.7ポイント下がった。ポストは前後の世代に流れている。年長の60代前半は0.9ポイントの上昇。30代前半も0.1ポイント高まった。こういうことは本気で是正されなければいけないし、こういうことが二度と繰り返されてもいけない。

年齢相応の経験が不足している分、転職市場でも埋もれがちだ。厚労省の雇用動向調査によると、40代後半の男性の転職率は5.4%と30代後半の男性より2.3ポイント低い。転職が賃金アップにつながる割合も20~30代は4割に達するのに対し、氷河期世代は3割前後にとどまる。

人手不足の環境で雇う側は人材の獲得や流出防止のために待遇改善に動く。その網からも漏れている恐れがある。第一生命経済研究所の永浜利広氏は「企業が氷河期世代は転職の可能性が低いとみて賃上げに消極的な可能性もある」と指摘する。ひどい話だ。

不遇のままでは資産形成もおぼつかない。金融広報中央委員会のデータで40代の金融資産保有額をみると、23年は100万円未満の割合が14.0%と2桁に達した。20年前の03年から2倍以上に膨らんだ。元手がなければ運用も難しい。このままでは「老後は厳しい」と日本総合研究所の下田裕介氏は危惧する。

終身雇用のような旧来の日本型の安定は期待できなくなっている。デジタル化などで求められるリスキリング(学び直し)もままならないようだと、昇給も昇進も得られない負のスパイラルが続きかねない。

稼ぎの乏しい層が高齢化する影響は大きい。介護や医療は収入の多寡で自己負担額や保険料が変わる。社会全体で負担と給付のバランスを保つのがますます難しくなる懸念がある。そもそも経済的な理由で結婚できなかった人も多い。単身高齢者は孤立で生活の質が下がって健康を損なうリスクが大きいとされる。

氷河期世代は日本の総人口の2割を占める。いかに力を引き出すかは企業にとっても重い課題になる。政府は19年に支援プログラムをまとめるなどテコ入れを図ってきてはいる。一連の対策は本当に効いているのか。経済情勢の変化も踏まえ、改めて検証しなければならないだろう。(参考:日経新聞記事)

(その42に続く)

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止まることのない#少子化 (その40)

ビジネスライター大村大次郎さんの論評に賛同し参考にさせていただいています)
欧米のデータでは「女性の学歴が上がれば少子化は進んでいく」と言われていたという。
1970年代後半から少子化が始まった日本に先じていた欧米の少子化は1975年頃までは深刻であって、当時は日本より出生率は低かった。
ただそれからの40年の進み方が日本と欧米とでは大きく違ったという。

ヨーロッパ主要国は少子化を必死に食い止めようと政府が金と労力をかけていった。
家族関係社会支出へのGDPの支出割合を見てみるとそのことが判然とわかる。

1974年には日本の出生率は2を上回っていて、イギリスもアメリカもドイツも日本より低く、すでに出生率が2を下回っていた。

ところがそれは2017年になるとこんな数字に大きく変わっていたのですね。現在日本は1.30を切っているような状況ですね。

少子化問題の最大の原因は経済問題。
30~34歳の男性では、正社員の既婚率は約60%、非正規社員の既婚率は約20%と言われる。
裏を返せば派遣社員が増えるほど経済的問題で結婚が難しくなるということか。

現在、日本で働く人の約4割が非正規雇用。うち男性は700万人。この20年で倍増している。
日本の少子化は異常なスピードで進んでいて、更に「非正規雇用が増えれば、結婚できない若者が増え、少子高齢化が加速する」という図式ができているではないか。
なぜ政治はそこを動かそうとしないんだ。なぜ手を付けようとしないんだ。

非正規雇用がこれだけ増え、定着したのは政界と財界の責任であろう。バブルの崩壊後、不況に陥り、財界は苦し紛れか「雇用の流動化」を進めていった。雇用の流動化とは従業員をすぐ辞めさせられるやり方です。
もう30年も経ったんですよ。しかも政界もこれを是正もせず、むしろ後押しもした時代である。これで少子化対策なんて大手を振ってよく言えますよね。
90年代半ばまでは20%程度だった非正規雇用の割合が、98年から急激に上昇、現在では30%を大きく超えているのが現実ですよ。

これはOECD34カ国における子どもの相対的貧困率です。
相対的貧困率は、その国民の平均所得の半分以下しか収入を得ていない人たちの割合です。
しかも最近は日本の平均所得は他国比、低いですから絶対的貧困率はもっと悲惨ですね。


更に「一人親世帯」の子どもの相対的貧困率になると日本はワースト1位ということである。
ひとり親家庭の「正規雇用」の割合は母子家庭50.7%、父子家庭71.4%となっていて、ひとり親家庭の正規雇用率は著しく低い。
非正規雇用の増加が貧富の格差を招いたと言いましたが、子どもの貧困に関しても同様に、非正規雇用の増加が大きな影響を与えているのです。

また更に消費税が少子化問題を悪化させたのも明らか。消費税は所得に比例していなくて、割合は一定であるから、当然高所得者よりもそれ以外の人の方が負担が大きくなる。これもどんどん上がり続け、消費者の負担になって少子化に輪を掛けた形になった。


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#止まることのない少子化 (その39)

(#地方再生 )この問題の一つに東京(大都市)一極集中化という問題がある。地方に魅力がなくなって多くの若者(特に女性)が東京や大都市に出てきて生活する

地方ではどんどん若い人が減少し、ますます地方には魅力がなくなり老齢化していく。
日本全国各地でそういう現象を見直し、輝ける地方にしようという動きが出てきている。
いわゆる「街おこし」と言われるもので、企業を誘致したり、その地域の観光を世の中にPRしたりして、人が移住したいような魅力ある街を再生しようとしている。

今日のニュースで取り上げられていたのは栃木県宇都宮市の次世代型路面電車LRT(ライトレール)だ。現在これは富山県で2006(平成18)年開業の富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)に続くもので、宇都宮市と芳賀町を結ぶ宇都宮ライトレールが完全新設路線として開業したもので全長14.6キロメートル、宇都宮駅から工場地域を44分で結ぶものだ。

(宇都宮LRT公式HPよりの写真)
この電車は環境にやさしい電車であり、車社会の見直しという意味合いもあり、①マイカーを減らしての渋滞の緩和。②CO2の削減などの大きな特徴があり、住民が高齢者になって車に乗らなくなっても、利用できるもので車内に段差がない低床車両で騒音もない電車だ。

LRTを整備することで、今までは自家用車を使わなければ行くことができなかった場所にも公共交通を利用することが可能になり、環境負荷の軽減や沿線の市街地の活性化につながります。宇都宮市も、公共交通のネットワークを構築することで人口減少や少子高齢化などの時代の変化に対応できるまちづくりを進めています。LRTを導入することでまちづくりに大きな効果があるのか、知っておく必要があるでしょう。

(富山市観光サイトよりの写真)
「富山ライトレール」は利用者の減少が著しかったJR富山港線が走っていた路線の大半を引き継いで誕生した日本初の本格的LRT。
富山市は郊外に居住地が形成されているため、徒歩圏内に病院や行政サービスなどの機能がそろっておらず、車を使えない市民にとっては不便な街となっていた。そこで、富山市は公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりに着手し、その一環として2006年に「富山ライトレール」が誕生しました。その後、市内の中心市街地を環状線化する事業や、富山駅の南側と北側をそれぞれ走る路線を接続する事業が行われた。富山市から離れた近辺の都市ともLRTでつなげば近隣の街おこしにもなるものと思われる。

(その40に続く)

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奨学金学生の現実

東洋経済オンラインより

ある中流家庭育ちと自覚している大学生A君の現実。大学入学時に第一奨学金と第二奨学金を申請して、審査を通り月々5万4000円、2万円づつ借りて借りてこれを大学での授業料に充てているという。卒業時には350万円の返済が待っている。

大学生で#奨学金 を受給している割合は、大学(昼間部)で49.6%、短期大学(昼間部)で56.9%、大学院修士課程で49.5%、大学院博士課程で52.2%(日本学生支援機構調べ)となっているとのこと。大学生の平均借り入れ額は約310万円で卒業後の返済に苦しむ人も少なくなく、返済の負担感を「苦しい」と回答したのは、全体の44.5%と半数近くにのぼっているとのこと。同時に、4人に1人が、#奨学金 返済を延滞したことがあるとの報告もある。

政府の方々、これが現実ですよ。これが今の学生なんですよ、恵まれてきたあなた方とは全く違う世界ですよね。文部科学省によれば、令和3年度の大学の入学金・授業料を合わせた初年度の学費負担は、平均約80万~120万円、4年制の大学であれば平均500万円近くの学費を負担することになりますよ。学費が高いことによって負担が増し、また、非正規雇用や無職になることも相まった結果、調査の回答者の2割が貯金を切り崩して生活をしているようだ。

1980年ごろと比較しても、40年間で授業料は国立大学が約15倍(入学料は約5.6倍)、公立大学が約20倍(入学料は約15.8倍)、私立大学が約4.7倍(入学料は約2.6倍)値上がりしています。一般家庭の給料は下がり気味であったのに、これが現実です、なんか変ですよね。

最初に出てきた大学生A君は卒業後毎月3万円づつ返済しても10年近くかかる。この中流家庭の学生が「僕が生まれるずっと前から、この国は経済成長していません。給料は上がることなく、逆に可処分所得は減っています。そのくせに、政府は増税を声高に叫び、それでいて学費は下がらない……。もどかしいというわけではないですが、『どうして、こうなっちゃったんだろう』とは思ってしまいます」と本心を述べています。まったくその通りです。このような奨学金借入者、返済者を国が積極的に救済すべきである。


 

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#止まることのない少子化(その38)

いろいろなことを考えて多くの専門家の先生や研究家の意見を見てきたが、行きつくところは「賃金が上がらない」「雇用の不安定」「過大な女性への保育負担」が多くの原因の源になっていると思う。若い人達が本当は望んでいるだろう共働き、共保育の実現によってもたらされる『幸せ』ということを阻害している源であると思う。

立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人氏によると国際競争に晒された日本企業は利益が出ても社員に「賃上げ」せず、さらなる競争に備えて内部留保をため込んできたという。だが他国も同じように国際競争に晒されているが「賃上げ」ができている。1991年から2019年の日本の賃金上昇率は1.05倍で英国は1.48倍、米国は1.41倍、ドイツ、フランスは1.34倍である。日本の賃金上昇率は異常な低水準だ。国際競争以外に理由はあるだろう。

日本の企業が『賃上げ』対応できない理由の1つは「年功序列・終身雇用制」だという。海外の企業は、基本的に年功序列・終身雇用がなく、「ジョブ型」の雇用制度を採用している。それは企業が勤務内容・勤務地・時間など条件を明確化して雇用契約を結ぶ雇用制度で労働者は、契約の範囲内で働き、異動・転勤はなく、昇進や昇格もない。

ジョブ型では優秀な人材はよりよい待遇を求めて企業を渡り歩く。企業は賃上げをしないと、人材を引き留めることができず、国際競争に勝つために賃上げする必要がある。海外では「同一労働・同一賃金」であり、同じ労働をして、正規と非正規、大企業と中小企業で賃金が異なることはないという。

日本では「同一労働、同一賃金」ではなく、同じ社内で年功序列・終身雇用の権利を持つ正社員の方が、非正規社員より賃金が高い。また、大企業と中小企業の間でも同じ労働で賃金に格差がある。大企業の正社員と、それ以外には、明確な上下関係、格差が存在する。
社内外の労働者から、企業に対する強力な賃上げ要求は起きない。むしろ、厳しい国際競争があるので、労働者に対し企業は忠誠や協力を求める。

日本で「少子化問題」が諸外国よりも深刻になるのも、年功序列・終身雇用制に問題があるという。この制度で結婚・子育てが若者にとって大きな障壁となってしまう。このことによって、結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い非正規になることを前提としている。まず、少子化問題以前に、年功序列・終身雇用制は「女性の社会進出」自体に大きな悪影響を及ぼしているという。その通りですね。

日本の「女性管理職比率」は14.7%で、先進7か国中最下位、2021年の世界ランキングでは世界187か国中177位という驚くほど低い順位にとどまっている。
少子高齢化を本質的なところから解決するためにはこの古い年功序列・終身雇用制の日本型雇用システムを変えなければならない

岸田総理は3年間の「加速化プラン」で取り敢えずの出生率の低下、上昇を見込んでいる。と同時並行的に時間のかかる「若い世代の所得を増やす」「社会の意識を変え、女性集中の育児負担の実態を変える」ということに取組んでいこうとしている。
恐らく、この後半の同時並行的な中長期プランには具体的な政策が浮かんでないかもしれない。まさに今回の「古い年功序列・終身雇用制の日本型雇用システムを変えていく」という
大きな正解が目の前に与えられたのではないのでしょうか。同時に女性の地位向上にも繋がりそうです。

(その39に続く)

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#止まることのない少子化(その37)

少子化の原因は何といっても結婚率が下がっていることが大きい。
その原因は保育の女性負担過大による影響もあるが「雇用の不安定」「賃金が伸びない」の2点が大きい。

2016年以降の出生数が減少しているが、それは若年層の人口が減ったからに他ならない。これが大きな要因になった。今も20代人口が減ってはいるが、減少幅は小さい。しかし2025年くらいから20代人口は大幅に減少をする。これは2000年ごろからは、それ以前に比べて出生数が大幅に減少した結果であって、2030年ごろまでに政策を立ててから実行では遅いのですね。若年層が大幅に減ってしまっているから。京都大学の柴田悠准教授などは2025年が立て直すタイムリミットであって、早く手を打つ必要がある「即時策」を提案されている。

6月13日に政府は「こども未来戦略方針」を発表し、その中で3つの基本方針を立てた。
1つ目が若い世代の所得増加。2つ目が女性への育児負担集中の是正、3つ目が子ども子育て世帯支援であった。1つ目、2つ目については具体策に触れず別途今後3年間の加速化プランの具体策を出してきた

恐らくは京都大学の柴田悠准教授などのアドバイス、考えを参考にして、1つ目、2つ目は今すぐには効果が出せず、その後に結果を出さざるを得ないと考えたものと思うと符合する。

柴田准教授などの「3つの即時策」2025年がタイムリミットと考え
1つ目が児童手当の拡充。給付額を1%上げると諸外国の例から出生率が0.15%上がるため、2.5兆円で125%増となるから出生率は18.75%上がり1.30から0.24上がるという計算。
2つ目が学費軽減。すべての学生を対象に免除すると1.5兆円。0.08出生率が上がるという計算。
3つ目が保育の定員増。1,2歳の子ども全員が保育所に通えるシステム。保育士の賃金引き上げなど含めて2.1兆円。出生率は0.13上がるという計算。
三つの即時政策で合計0.45出生数が上がるという。

恐らく政府は専門家からこういうアドバイスを受けて、取り敢えず出生数を上げておいてその上で若い世代の所得増加、雇用不安定、育休制度の徹底、長時間労働の廃止による男女保育分担などを考えているのだろう。

いずれにしてもこれだけの予算の倍増手段、今後の「働き方改革」に国が本気度を出していくのか、その経緯を見守っていかなければならない。

(その38に続く)

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#止まらない少子化 (その36)

4月に次いで岸田政府は6月13日に「こども未来戦略方針」を発表した。

3つの基本理念として
*若い世代の所得を増やす
*社会の意識を変え、女性集中の育児負担の実態を変える。
*すべてのこども・子育て世代を支援する。

そして、加速化プラン—3年間の集中取組期間で前倒しとして以下の項目を「具体的施策」として挙げた
・児童手当の所得制限撤廃、支給期間を高校生年代まで延長。第3子以降は3万円。
・出産・子育て応援交付金(10万円)制度化検討。出産費用保険適用導入検討
・貸与型奨学金の減額返還制度利用年収の引上げ、授業料減免、給付型奨学金拡大
 授業料後払い制度修士学生に導入
・短期労働者への被用者保険適用拡大、最低賃金引上げに取組む。
・公営住宅に子育て世代が優先的に入居できる仕組み導入
・職員配置基準を改善し保育士などの処遇改善検討。新たな通園給付を創設。
・放課後児童クラブの待機児童の受け皿確保
・ひとり親を雇い入れ、育成・賃上げに取組む企業を支援
・男性育児休業所得率の政府目標を引上げ、開示制度の拡充検討
 両親の育休取得率を現行の67%から80%に引上げ。中小企業への助成強化
・仕事、育児両立に取組む労働者の為に週休3日制普及取組
・雇用保険適用外の労働者の失業保険・育児休業などの適用検討
・国民保険第1号被保険者の育児期間の保険料免除措置を創設

首相は未来戦略として3つの基本理念を掲げた。だがよくよく見るとかなりの違和感を感じませんか。
10幾つかの「具体的施策」を並べている3つの基本理念の一番大事な筈の「*若い世代の所得を増やす」には全く何も触れていない。次に大事な「*社会の意識を変え、女性集中の育児負担の実態を変える。」については、かろうじて「・短期労働者の最低賃金引上げに取組む。」「・男性育児休業所得率の政府目標を引上げ、開示制度の拡充検討、両親の育休取得率を現行の67%から80%に引上げ。中小企業への助成強化」「・仕事、育児両立に取組む労働者の為に週休3日制普及取組」の3項目だけ上げている

他のほとんどの「具体的施策」は基本理念の3番目についてであり、これは従来から政府が言っていた現金給付を中心とした、目に見え易く、やり易い政策ですね。うがった見方をすれば社会世論とか専門家の意見に押されて、くっつけたという感じが否めません。選挙対策用と言われても仕方のないものですね。本気ですか?

やはり大事な1番2番の基本理念を政府がきちんと行うかどうかを社会全体で監視して判断して、そうでなければ世論を盛り上げていかなければいけないですよ。

(その37に続く)

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#止まることのない少子化(その35)

吉田千鶴関東学院大学経済学部教授のお話を参考にしました

少子化対策はいろいろの対策を考えるよりも、だれもがみんな幸せになるにはどうしたらいいかということを真剣に考えることだという。そのいい例が北欧の諸国の中からくみ取れるという。

たくさんの諸対策が考えられ、そして検討されている。しかし、その前提となる「誰もが 幸せ」ということが検討はされていませんね。その答えは「長時間労働」の廃絶だという。

日本は1945年に戦争に負けて、そしてそこから世界が目を見張るほどの勢いで、産業立国として、みんなが頑張り、GDPがアメリカに次いで世界2位になるほどの大国になっていった。
その間、日本人は朝早くから、夜遅くまで働き頑張り続けて家庭を守っていく習慣がついた。それ以来日本では「長時間労働」が当たり前。より遅くまで働く方が偉いんだという考え方が根付いてしまった。それは日本の独特の働き方となった。

そして、大家族から核家族化に移行するようになり、家庭は夫婦と子供が基本になってから、共働きが始まり、更にはバブルが弾けて、世の中が不況なると子どもを育てるために共働きは多くの家庭で必要になってきた。と同時に少子化の問題も発生してきたんです。

だが、子供を持つことと、共働きと長時間労働がうまく調和しなくなってきたんですよね。当然、夫婦が今までの働き方の中で子どもを産み育てることはできないですよね。
最近は一部の家庭を除いて1人の稼ぎだけで生活をできる夫婦は少なりました。
今迄みたいに長時間労働し、更に家事・育児をやることも難しくなりました。
多くの夫婦が共に働いても生活が苦しいような状況です。

特に日本は賃金格差が大きく、女性の賃金が低かったり、非正規のため雇用が不安定になったりします。すると当然一方が長時間労働をして生活を成り立たせなければいけません。
その中で子育てを考えなければいけません。

そうすると、何が障害になるかというと「長時間労働」ですよね。
夫婦二人とも適正な労働時間で働き、ともに家事・育児をできるということにならなければ、問題は解決しません。

加えて賃金の高い企業はどちらかというと長時間労働を前提としている企業が多いため、そういう企業を女性が選択しにくいという悪しき習慣があります。これも今後の改善事項ですね。

たまたま6月19日の日経新聞朝刊に霞が関官僚自体が『ブラック企業』という指摘を受けているという記事があった。内閣人事局が国家公務員の時間外勤務を調べると20代総合職の3割が過労死ラインの月80時間を超えており、採用10年未満の退職者が2018年以降100人/年を超えているとのこと。少子化を進めていくべき内閣府がこういう状態では企業への指導もできないが、この問題が大きく取り上げられているので、早急に改善してもらいたい。

最初に言いましたように少子化に特化した対策よりも、最大の対策はみんなが幸せになるにはを考えることが一番大事ですね。

(その36に続く)

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新しい生き方(その1)

(6/18日経新聞より)

IT技術者になる女性が増えているという。IT技術者にはプログラマーやシステムエンジニアリングなどが含まれていて日本では2020年に男女合わせて125万人(2015年に比べて25%増)いるという。2022年には132万人で世界4位だという。
日本の女性IT技術者が占める割合は2021年には22%となり、この10年で7%高まり欧米並みになり、異業種からの転職者数も10倍に増えたという。でも凄いですね。

賃金の男女格差が金融業とか製造業より小さくて在宅勤務も定着していることが背景にあるとのこと。

賃金が高くて、在宅勤務が定着しているのであれば、若い人が悩んでいる共働き、共保育の大きな支援になるだろうし、少子化対策の大きな足掛かりになるのではないだろうか。

一つの例として、あるソフト会社でマーケテイングの仕事をしていた27歳の女性が自分が考えるようなソフトを作れないもどかしさから畑違いの転職を決心して、会社を休職し3か月間、オンライン講座で毎日勉強してスキルを身につけたという。企業にデジタルトランスフォーメーションの加速が必要になり、テック人材の需要が高まってきたのが追い風だ。

IT技術者のメリットは
①賃金の男女格差が小さい
②働き方の自由度が高い(時間、場所)
などがあげられる。
国交省調査だと2022年度はテレワークの実施率74%は主要産業の中で一番高いという。

政府もここに注目し、働き方を柔軟に選べ育児などをしながらも働きやすい環境を作るべきではないか。「学びなおし」などという抽象的な言葉ではなく、上記例の女性のようにオンライン講座のようなITの専門知識を学べるような教育基盤を作る必要がある。
企業の遊休の休業システムでもいいだろうし、きちんとした形でのIT企業への転職支援でもいいと思う。

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止まることのない少子化(その34)

国は6月16日、『経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針と言う)、「新しい資本主義実行計画の改定」など3計画を決定した。岸田首相は「予算編成や制度改革の具体化を進め、国民全体が将来に明るい希望を持てる経済社会をつくる」と述べている

骨太の方針は「こども・子育て政策」を最も有効な未来への投資と位置づけ推進していくと強調し、「こども未来戦略方針」に基づき、児童手当の拡充や高等教育費の負担軽減、男性育休の取得促進などの対策を挙げている。

児童手当の拡充を始めとして政府が強調して掲げている給付金や施設関連などの支給的なことも大事なのであろうが、根本的な問題としては、若いこれからの人達がどう生きていくかということを第1に考えることが最重要だろう。結婚したことも子どもを産んだこともない人が、『産もう』と思える社会にすることが大事なことであり、例えば国を挙げて若い人を中心に給料を上げる、非正規社員制度を撤廃する、男性も女性も本当の意味で産休・育休が取れることを企業に義務付けて、共育て、共働きのできる社会を作るとかいうことが優先でしょう。

そういった意味では今回の「骨太の方針」では「少子化対策」と「労働市場改革」は1つとして考えていく方が良策と思われるし、岸田首相がご自身でも言ってられるように、誰でもこれからの生活に夢とか希望、心からの安心感を持てる社会を育て上げるということが、本当の意味での「少子化対策」になるのではないでしょうか。

(その35へ続く))

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