岸田総理大臣が「異次元の少子化対策」を打ち出して、所得制限の撤廃や児童手当の増額などをはじめとした政策を示したが、今世界で注目を集めてきているのがハンガリーのまさに「異次元の少子化対策」ではないだろうか。
ハンガリーは人口が1千万人弱の国であるので、1億人以上の人口と世界での位置づけから日本と比較するのは無理があるかもしれないが、日本が少子化対策に「異次元」を大上段に構えるのならそれなりの覚悟がいるだろうとの思惑です。
ハンガリーは1980年の1.91から徐々に出生率を落とし、1997年には1.3台、2010年には1.2台にまで低迷した。しかし、2010年から10年をかけて人口減少に歯止めをかけ、2021年には出生率が1.59となり1.60に迫るところまで来ている。
年 | 1980 | 1981 | 1982 | 1983 | 1984 | 1985 | 1986 | 1987 | 1988 | 1989 |
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1.91 | 1.88 | 1.80 | 1.75 | 1.75 | 1.85 | 1.84 | 1.82 | 1.81 | 1.82 | |
年 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 |
1.87 | 1.87 | 1.77 | 1.68 | 1.64 | 1.57 | 1.46 | 1.37 | 1.32 | 1.28 | |
年 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
1.32 | 1.31 | 1.30 | 1.27 | 1.28 | 1.31 | 1.34 | 1.32 | 1.35 | 1.32 | |
年 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
1.25 | 1.23 | 1.34 | 1.35 | 1.44 | 1.45 | 1.53 | 1.54 | 1.55 | 1.55 | |
年 | 2020 | |||||||||
1.56 |
オルバーン政権は、所得税を大幅に減免したり、無利子のローンを使うような大胆な少子化対策を打ち出し、GDPの5%から6%を家族政策のために使っているという。
まず、使途の縛りがない無利子ローンが特徴的だという。妻の年齢が18歳~40歳の夫婦は、国から1000万フォリント(約350万円)を無利子で借りられ、返済期間は最大20年で、最初の5年間に1人の子どもが生まれると返済が3年間猶予。第2子を出産するとさらに3年間返済猶予。しかも元本の3割が帳消しにされる。第3子を出産するとローン残高のすべてが返済免除。なんと子どもを3人産むと借金がゼロになるという。
子どもがいる母親は所得税が優遇される。4人の子どもを持つ母親は、生涯所得税を払わなくてよいという。2022年から、25歳未満の若者は男女とも、子どもがいてもいなくても、所得税が免除されるようになったという。
またさらに、満30歳の誕生日を迎える前に子どもを持った母親や、大学の学生ローンを借りている女性が妊娠した場合にも大幅減税されるという。
少子化対策の一環として、若者に手厚い経済的支援を行っているハンガリーの例は、日本にも参考になると思う。ハンガリーの家族政策担当のホルヌング・アーグネシュ次官も、インタビューで「最も重要なことは、子どもが欲しい人誰もが安心して子どもを産めるようにすること」と語っている。日本でも外国人の移民をあまり奨励をしていないことを考えると、ハンガリーのように若者支援に焦点を当てた、大胆な政策シフトが必要であうと思われる。
駐日ハンガリー大使が、日本の少子化対策について「日本は高齢者に重点を置いた経済活動をうまく進めてきていると思うが、同時に若年層や子どもたちのための『幸せな家庭』(ハッピーファミリー)経済活動も行われたらといい」というご意見を寄せられたという。
今や日本の共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上に膨らんで、多くの夫婦が共働きである。育休から仕事に復帰してからも、仕事と子育ての両立に苦しむ夫婦もたくさんいることが想像される。シングルマザー、シングルファーザーの家庭なら、なおさら厳しい状況に置かれているだろう。 岸田政権も異次元の少子化対策と言われるのであれば、所得制限の撤廃や児童手当の拡充を中心にするだけでなく、さらなる大胆な政策を打ち出し、社会全体で子育てを支える仕組みを作らないと効果が出てこない。
今回はハンガリー事情にお詳しいジャーナリスト大門 小百合さんの記事を参考にさせていただきました。